活動実績

2021.08.22
コラム

コラム:空間デザインと法とのこれからを考えて(小岩井 淳雄)

皆様、今年からこちらの協会にお世話になります、小岩井です。先日の総会では理事に任命頂きました。これからも次の世代に残るカタチで活動を頑張りたいと思います。どうか宜しく願い申し上げます。

空間デザインと私の仕事について少しご紹介します。現在私は、一般社団法人日本空間デザイン協会でデザイン賞担当理事を務めています。国内外から空間デザイン作品、約900 点の審査・顕彰を行っています。今年は世界の3大デザインアワードの1つ「iFデザインアワード *1」との連携協議も完了しました。

空間デザイン協会は建築デザインと空間デザインを差別化すべく、6年前からこの日本空間デザイン賞を計画してきました。そして、この日本空間デザイン賞という形にしたことで、幅広い領域に携わるデザイナーの皆様や建築会社様も空間デザインに興味を抱くようになりました。日本空間デザイン賞は以下の応募ジャンルを設定しており、これらは同時に空間デザインの領域を表します。

1.エキジビジョン、プロモーション空間

2.ショーウィンドウ&ビジュアルデザイン空間

3.エンターテインメント&クリエイティブ・アート空間

4.ショップ空間 

5.食空間

6.大規模商業空間(又は、複合施設空間) 

7.サービス・ホスピタリティー空間

8.博物館・文化空間

9.公共生活・コミュニケーション空間

10.オフィス空間

11.住空間

以上が審査領域となっています。昨年今年とコロナの影響で全体的に作品数が減少しましたが、2割減程度に留まり、空間デザイン業界の堅調な動きを示しています。

それでは具体的に法とデザインについて、私の持論とこれからの想いを記しました。

1.コミュニケーションをデザインする

私のデザイン領域を紹介します。1つは企業のショールームやモーターショーなどのイベントにおける空間デザインです。これらの企業プロモーションを目的に創られる空間デザインは、テレビ/ラジオ、新聞、交通広告、インターネットなどの主要メディアと並んで、第五のメディア(媒体)ともいわれ、企業活動の中でリアルコミュニケーションを司る重要な役割を担います。その代表例が東京モーターショーです。後ほどご紹介します。

もう1つはスポーツビジネス領域における空間デザインです。横浜球場や福岡PayPayドームなどのお客様を楽ませるコンコースのデザインを担当しました。食と時間をいかに効率よく、そして楽しめるか。ホームグラウンドのブランド意識などを高めながら、販売効率向上を目指します。

ところで、みなさん「コミュニケーションをデザインする」と言われた場合に何を連想しますか。

実は、既に皆さんは日常の中で、デザインされたコミュニケーションを体験・体感されています。

ショーウィンドウのディスプレイで季節を感じ、センスを感じ、ブランドを感じ、そして買いたい衝動へと誘う。博物館では、地域住民だけではなくその土地に初めて来られた方にも地域文化を知ってもらい、歴史の奥ゆかしさを届けています。住宅では、生活する豊かさを通じて、そこに住む方の家族の成長や未来の豊かさにつなげています。建築的な構造で守られる安心と内部のソフト的な思想の豊かさの両輪が日本の空間デザインではとても優れています。

次に、企業プロモーションを一例として紹介します。

"東京モーターショーに行かれたことはありますか?"

自動車産業は日本の主要な産業です。重要な産業の新鮮な情報をいち早く、リアルの人々に伝える、それがモーターショーの役割です。モーターショーは2年に一度の国際展示会です。東京、スイス、デトロイト、フランクフルト、パリ、北京などの各拠点で各自動車会社が5年から10年先のビジョンを掲げ、発表する大きなプレゼンテーションの場なのです。そこで発表する1日目と2日目の世界に向けたプレス発表での評価が、各自動車会社の将来すべてを左右するといわれています。

私達空間デザインの仕事にはこの評価に向けて、最大限の力でコミュニケーションブランディング構築のお手伝いをすることも含まれています。

2.ミライ -法とデザインのこれから-

今まで、法に対峙する局面での経験があまりありませんでした。マーケティング、デザイン、企業戦略の構築を主に行ってきたため、ほとんど、施主や代理店、社内専門部門などがその解決に当たり、「保護」の確認をお願いしていました。しかし、昨今、意匠法改正によりデザイン会社、デザイナー個人でも法に対する認識を持つ必要性が出てきました。それにも関わらず、現状、法的な専門用語を読み解くにも苦慮するなど、どうしてもとっつきにくいという大きな壁があり、馴染めない原因になっているかと思います。このような現状において、法従事者とデザイン従事者の接点をどう持つか、WINtoWINの関係性をどう築くかです。空間デザインでも工業デザイン(ID)と同様に法的な保護が成立しえるのか、また法と寄り添えるのか、施主にもメリットを共有できるのか、などなど、こんなことを考えながら活動を行っていきたいと思います。また国際化に向けて、「守りの法」から「攻めの法」へとシフトも考えていきたいと思います。

株式会社 丹青社
デザインセンター
カルチャー&コミュニケーションデザイン局
第1デザインユニット デザインディレクター
小岩井 淳雄

注釈)

*1 iFデザインアワード:iF DESIGN AWARDは、iF International Forum Design GmbHが主催し、1953年以来、世界で最も権威のあるデザイン賞の1つです。iFロゴは「優れたデザインの証」として世界で広く認知されています。本アワードは、Product Packaging CommunicationInterior ArchitectureService Design Professional Concept Architecture7つの部門で構成され、毎年50か国から7,000を超える応募が寄せられ、70名以上の著名なデザイン・建築の専門家によって、IdeaFormFunctionDifferentiationImpactの観点から審査が行われます。受賞した作品は、40か国以上から2千名を超える参加者が集う華やかな授賞式で表彰され、ベルリンで開催されるiF design exhibitionに展示されます。
インターブランドジャパンHP(https://www.interbrandjapan.com/ja/award/if-design-award.html)より引用)