活動実績
第2回法制度研究部会
第2回法制度研究部会報告
日時:2021年7月19日 18:00~20:00
ZOOMによるリモート開催
テーマ:組立家屋の意匠保護について
(平成30(ワ)26166 意匠権侵害差止損害賠償請求事件を素材として)
スピーカー:株式会社アールシーコア 社長室知財企画 川島幸一 様
参加者:42人
[研究会の概要]
意匠に係る物品を「組立家屋」とする意匠権に基づいて、建売住宅の意匠を意匠権侵害であるとして訴訟が提起され、原告勝訴の判決が出されたのが表記事件である。
研究会では、この事件の原告である株式会社アールシーコアの川島浩一様をお招きして、訴訟の概要をお話し頂くと共に、物品の意匠である「組立家屋」の意匠と建築物である住宅の意匠との関係を中心に、参加者と共に検討した。
[講演概要]
1.商品
株式会社アールシーコアが販売する住宅は、スローライフ指向の住宅であり、全国37の拠点を地域工務店とのフランチャイズ契約により「BESS」ブランドを掲げ展開している。客の感性が高く、展示場で体感して「こういうのが欲しかった」という人が購入しており、注文住宅であるが間取りは決まっている。プロダクトアウトの商品である。
*「スローライフ」は株式会社アールシーコアの登録商標
2.裁判について
(前史)
今回のWONDER DEVICEに関しては、ユーザーから模倣の指摘があり、物件を調査して提訴した。被告物件は建売住宅。
(判決)
物品性(組立家屋であること)に関しては、被告のブログに掲載されている2×4パネル工法であることを示す施工写真を活用した。不競法の主張が認められなかったことは残念。裁判所が否認の根拠とした例は全く似ていない。(写真で説明)
利益の額は、被告製品が建売住宅のため立地条件なども勘案され、裁判提起後に非類似に改造されたこともあって、寄与率10%はやむを得ないとも思うが安い。
(提訴の意図)
模倣はフランチャイズシステムの統制に支障が生じるおそれがあるので阻止したい。また、改正意匠法による建築デザイン保護に関する不利な解釈(組立家屋の権利が在来工法の家屋に及ばないという解釈)の定着を阻止したいと考えた。
3.住宅業界の構図
地域パワービルダーと地域工務店での模倣が多い。
(デザインが似る事情)
ビルダー(工務店)のデザインは建材メーカーが牽引している。
建材メーカーはカタログやHPで自社の建材(サイディング、軒とい、サッシ、ドアなど)を使用した家屋のデザイン(施工例)を提案し、ビルダーはそれを参考にする。模倣(施工例をそのまま採用)への後ろめたい気持ちを持ち得ない環境となっている。
業界がアンチパテントでやってきたところに意匠法改正があった。
4.改正意匠法について
・業界紙では「建築のデザインにオリジナル性があるのか」という議論もあった。
・審査基準で「工業的に量産」が「複数物を生産」に変更されたことは評価。
・「組立家屋」の意匠権が「建築物」に及ぶことが重要。現状、戸建て住宅の殆どは「組立家屋」といえるのではないかと考えている。
・侵害品の購入者はかわいそう。
以上