活動実績

2021.10.06
コラム

コラム:デザインと法の「見え方」(平井 佑希)

私は、普段知的財産に関する紛争を中心に扱う弁護士として活動しています。紛争の場面では、創作者の方が生み出し、弁理士の方が知的財産権という武器に仕立て上げたものを、弁護士が手にとって、相手と戦うことになります。その際には、学者の方が積み上げた理論や、裁判所で積み上げられた判例で理論武装をします。我々弁護士は、丸腰では戦えず、このように知的財産に関わる多くの人たちの援護を受けて戦っています。

同じ知的財産でも、このように各段階でさまざまな人たちが関与しており、その立場に応じて、知的財産や知的財産法の「見え方」というのは違っているように思います。この協会の大きな特色の1つとして、デザイナー・企業・弁理士・弁護士・学者などが一同に集うという点が挙げられていますが(協会ウェブサイトトップページ参照。)、私はそのことが、この「見え方」の違いに関する相互理解を深めることに大いに役立つのではないかと期待しています。

紛争を中心に扱う弁護士である私が、意匠法について最近考えていることは、「当てに行く意匠」を作れないかという点です。知的財産法のうち、特許法や意匠法といった創作を保護する制度は、新しく生み出されたものに対して権利が与えられるのが大原則です(新規性の要件)。したがって、既に目の前に存在するライバル製品に対して、新たに出願をして、権利を取得し、その権利を行使することは通常はできません。

しかし、例えば特許法では、分割出願(特許法44条)という制度があり、最初に出願した時に提出した明細書等に開示されていた範囲内に限定されはしますが(すなわち、全くの「後出し」はできませんが)、そこに開示されていた技術内容を別の出願として分割出願を行い、権利化を図ることができることになっています。この場合、新たな特許出願はもとの特許出願の時にしたものとみなされますので(特許法442項)、現に存在するライバル製品との関係でも新規性が保たれることになります。これを活用することで、最初に提出した明細書等に開示されていた範囲内で、既に存在するライバル製品に対して、新たに「当てに行く」特許を作ることもできます。

これに対して、意匠法にも分割出願の規定(意匠法10条の2)は存在するのですが、あまり「当てに行く」意匠という観点で活用されていないように感じます。例えば全体意匠の一部分を模倣したライバル製品が登場したような場合に、その一部分を部分意匠として分割出願して当てに行く意匠を作ることはできないのかなど、権利を使う側の視点からは考えています。例えば、実際にあった私の経験として、既に存在するライバル製品に対して、特許出願を分割し、そこに記載されていた図面から意匠出願(部分意匠)に出願変更(意匠法13条)を行い、意匠登録を受けて、権利行使をしていったことがあります。ややトリッキーかもしれませんが、こういった方法も活用できます。

こんなことを話すと、出願に携わる弁理士の方の視点からは、「素人が何を言っているんだ。そんな簡単じゃないんだよ。」などとお叱りを受けるかもしれません。デザイナーの方の視点からは、「そんなのは創作じゃない。制度の悪用だ。」などと思われるかもしれません。ただ、立場が違えば見え方が違うわけですから、そういった立場を超えて、さまざまな議論をすることが、相互理解を生み、この協会が盛り上がり、ひいては知的財産制度の発展につながるのではないでしょうか。

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